鍼灸師のキャリアアップの方法は？仕事の現状と将来性を解説！

鍼灸師の業界が直面している課題について～働く場所～

鍼灸師の課題は2点指摘されています。新人の鍼灸師を養成する仕組みや勤め先が不十分であるということと、地域によっては鍼灸院が供給過多になる可能性があることです。鍼灸師の数は、年を経るごとに増加傾向にあります。例えば、はり師、きゅう師の合格者数を見ると、それぞれ例年3000人～4000人程度が合格しています。それに伴い、鍼灸師として就業している人の数も増加しています。厚生労働省の統計によれば、平成20年時点では、全国のはり師ときゅう師はそれぞれ86,208人、84,629人でした。しかし平成30年時点では、はり師、きゅう師はそれぞれ121,757人、119,796人に大きく増加しています。また、増加しているのは鍼灸師そのものだけではありません。鍼灸師が働く場所である鍼灸院や整骨院も増加傾向にあります。平成20年時点で19,451か所だった「はり及びきゅうを行う施術所」は、平成30年時点では30,450か所と、大きく増加しています。こうした状況を、鍼灸師の需要の高まり、と単純にとらえることはできません。鍼灸師が増加傾向にある理由の一つとして、鍼灸師養成学校の増加が挙げられます。鍼灸師養成学校が増加した結果として、数多くのはり師、きゅう師国家資格の所持者が生まれました。しかし問題は、そうした新人の鍼灸師を育成することが可能な勤め先が少ない、ということにあるようです。また、鍼灸院の数が極端に増えることで、地域によっては、患者さんの数に対して鍼灸院が多く、患者さんの取り合いになる、といったケースもあるようです。鍼灸の需要が高まりつつあることは事実でしょうが、それにふさわしい仕組みや供給体制が整っていないとも考えられます。

鍼灸師の将来について

社会変化がもたらす鍼灸師の需要の増加

鍼灸師の課題としてご紹介したように、まだまだ足りない部分はあるようですが、鍼灸師の需要は増加傾向にあると言えるでしょう。というのは、近年、鍼灸が様々な分野で注目されているからです。例えば、美容業界では、顔や頭皮に鍼を施すことで肌の調子を整える施術が注目されています。また、薬剤を使用しない医療である鍼灸は、ドーピング検査等を考慮しなくてはならないスポーツ選手にとっても重宝され始めています。様々な領域で注目されつつある鍼灸師の需要は今後も高まると考えられています。

女性の鍼灸師が活躍する場が増える？！

女性の鍼灸師が活躍する場は増えつつあるようです。その理由として、先ほどもご紹介したように、美容業界での需要の高まりが挙げられます。鍼灸が美容によい、とされるようになったことで、「美容鍼」と呼ばれる施術が注目されています。また、鍼灸は身体に触れる施術です。そのため、同性の施術師の方が安心、リラックスできる、という女性は多いようです。妊娠や月経など、女性特有の身体の悩みなどを相談しやすい、といったことも挙げられます。そうした事情から、今後女性の鍼灸師が活躍する場は増えていくと考えられています。

鍼灸師のキャリアのスタート～就職先～

鍼灸院

鍼灸師の最もメジャーな就職先が鍼灸院でしょう。鍼灸院ではその名の通り、患者さんに鍼灸を施します。業務内容としてはそういった施術のほかに、院内の清掃や受付、事務作業等も含まれてきます。鍼灸院で経験を積んだ後で独立開業を目指す人もいるようです。

病院

鍼灸専門の鍼灸院ではなく、病院に就職する場合もあります。病院では主に整形外科やリハビリテーション科に勤めることとなるようです。鍼灸治療だけでなく、検査等の業務にあたることもあります。医師や他のスタッフと連携を取りながら患者さんの治療にあたるため、鍼灸のような東洋医学の知識だけでなく、西洋医学の知識が必要となる場合もあるようです。

介護施設

鍼灸師は、介護の業界でも需要が高まっています。高齢化社会ということもありますが、身体に負担の少ない鍼灸は、高齢者に向いているとされているからです。介護施設に訪問する形で施術を行う鍼灸師もいますが、介護施設に勤める形で鍼灸治療を施す鍼灸師もいるようです。

スポーツ施設

鍼灸はスポーツの業界でも注目されています。負担をかけずに身体の調子を整えたり、運動機能を高めたり、といった効果が期待されている鍼灸は、薬を使わないためドーピング等の心配もなく、重宝されています。そのため、鍼灸師の資格を取得してスポーツトレーナーとして働くことを目指す人も多いようです。

鍼灸師のキャリアアップの仕方

鍼灸師としての技術を高める

鍼灸師は、資格をもっていれば皆同等の技術を持っている、という訳ではありません。鍼灸師としての技術は、経験を積まなければ高まりません。多くの患者さんと接し、様々なケースに触れることを通して経験を積んでいく必要があります。

ほかの資格を取得する

鍼灸師としてのキャリアアップを目指すのであれば、ほかの資格を取得するというのも手です。鍼灸師のキャリアアップにおすすめの資格は2つあります。1つは、はり師ときゅう師と同じ法律で認められている、あん摩マッサージ指圧師です。あん摩マッサージ指圧師は鍼灸とは違い、「あん摩」「マッサージ」「指圧」という3つの手法を用いて、患者さんの身体をケアします。もう1つが、柔道整復師です。柔道整復師は、「ほねつぎ」あるいは「接骨医」とも呼ばれています。骨や関節等の骨折や脱臼といった外傷に対して、手術等によらない施術で整復をはかります。手術をしない、という点では鍼灸師と共通かもしれません。いずれの資格も国家資格であるため、取得には養成学校等に通う必要もあり、決してハードルは低くはありません。しかし、取得できれば大きなキャリアアップが期待できます。

独立

鍼灸師としての大きなキャリアアップの手段は、やはり独立開業でしょう。もちろん、独立開業には様々な条件が伴います。施術室や待合室の広さ等に関する様々な規定を満たしたうえで届を出し、認可を受ける必要があります。独立開業は、成功すれば大きなキャリアアップと言えるでしょうが、リスクも伴います。独立開業は、資格さえ持っていればすぐうまくいく、というものではありません。十分なキャリアを積んだうえで、さらに経営等に関する知識も習得したうえではじめてチャレンジできると言ってよいでしょう。

転職

鍼灸師としてのキャリアを活かせる転職先としては、エステティシャンや介護士等が挙げられます。美容鍼灸の注目に伴い、鍼灸の知識を美容に活かすことが可能となりつつあります。訪問施術等で高齢者の施術を担当した経験があれば、介護職に転職することも考えられるでしょう。

まとめ

鍼灸師という職業は、社会の変化に応じて需要が高まりつつある職業です。高齢化といったネガティブな社会変化ではなく、スポーツや美容など、鍼灸師の活躍の場が増えていることには期待が持てます。とは言え、十分な収入を目指すにはキャリアアップをはかる必要があります。キャリアアップの方法はいくつかありますが、どのような方法でも、十分な技術と経験がなければ成功はできないでしょう。自分にどのような技術が必要なのかを考えてキャリアを積んでいく必要があります。