義肢装具士のキャリアアップの方法は？仕事の現状と将来性を解説！

義肢装具士の現状について

義肢装具士の業界の現状について

1987年に義肢装具士法が公布されたことにより、義肢装具士という国家資格が誕生しました。同じリハビリテーション専門職である理学療法士や作業療法士が、約20年も前に誕生していたことと比較しても、義肢装具士の歴史はまだ浅く、一般的な知名度も非常に高いとはいえません。発展途上であるが故に、人材不足など業界特有の課題もある一方、これから高齢化社会が加速するにつれ身体障害者が増えて需要度が高まっていくことで、可能性を秘めている職業でもあります。現状だけ見て判断せず、義肢装具士の将来性を見込んで、国家資格の取得について一考してみてください。

義肢装具士の業界が直面している課題について～人材不足～

義肢装具士の業界が直面している課題の1つは、人材不足です。義肢装具士の需要は高い状況にあります。厚生労働省の障害者数（統計）によると障害者数は436万人で、切断者数は推定7万人存在し、多くの人が義肢装具を必要としており、それに伴って義肢装具士の需要も高いといえます。また、義肢装具士は義肢装具製作所やリハビリテーション施設、病院だけでなく、近年は発展途上国などでの国際支援やスポーツの現場でも求められています。
一方で、義肢装具士は少ない状況にあります。公益社団法人日本義肢装具士協会の調査によると、義肢装具士の資格を所得しているのは、令和2年3月で5,558人です。この人数は死亡者や引退者を含むため、実働数はより少ないと考えられます。同じリハビリテーション関連の職業である理学療法士は10万人以上、作業療法士は7万人以上で、それに比べても少ないことがわかります。また、義肢装具士は資格取得者の増加が見込まれません。理由としては、受験者数は10年間でほとんど増加していない点、2022年の受験者は2021年より約40人減少した点が上げられます。

義肢装具士の将来性について

社会変化がもたらす義肢装具士の需要の増加

義肢装具士の需要は増加しているといえます。理由は2つあります。1つ目は、身体障害者は年々増加しているからです。厚生労働省の障害者数（統計）によると身体障害者の人数は、2006年は351.6万人で、2018年は436万人で、12年間で約85万人増加しています。身体障害者の増加の背景には、高齢化の加速があげられます。身体障害者の増加により、義肢装具を必要とする人数も増加しており、義肢装具士の需要も増加していると予測できます。
2つ目は、義肢装具を使用してスポーツを楽しむ方やパラリンピックなどの国際大会で活躍するアスリートが増加したことによって、生活用義肢装具にだけでなくスポーツ専用義肢装具への需要が期待されているからです。

女性の義肢装具士が活躍する場が増える？！

現在、女性の義肢装具士は多くありませんが、需要がある存在といえます。理由としては、患者さんが女性の義肢装具士を求める場合があるからです。義肢装具士は採寸や採型、調整を行う際に患者さんの身体に直接触れます。女性の患者さんの中には男性の義肢装具士に触れられることを拒む方もいらっしゃいます。そのような患者さんにとって、女性の義肢装具士の存在は重要になるでしょう。女性の義肢装具士は患者さんから求められており、活躍できる場が広がっていくでしょう。

義肢装具士のキャリアのスタート～就職先～

義肢装具製作所

義肢装具士の主な就職先は、民間の義肢装具製作所です。製作所に勤務する義肢装具士は、製作所が契約や提携している病院を訪問して、患者さんに直接カウンセリングを行い、義肢や装具を製作します。基本的には、製作から最終調整まで一人で担当します。例外として、大手の製作所は分業制を導入をしている場合があります。また、入院やリハビリ施設を備えた製作所の場合は、製作から患者さんの装着訓練まで担当することもあります。

リハビリテーション施設

義肢装具士がリハビリテーション施設に常駐して、理学療法士や作業療法士と一緒にリハビリを進めることもあります。義肢や装具を使用している方のリハビリを進める上で、義肢や装具の微調整が必要だからです。

病院

病院に常駐する義肢装具士もいます。大きな病院の場合、常駐している義肢装具士は製作や修理を病院内で行います。そのため、治療やリハビリの際の調整が円滑に行えます。

スポーツの現場

義肢装具士は製作所などに所属しながらスポーツ現場でも活躍できます。義肢や装具を使用し、パラリンピックなどの国際試合で活躍する選手が日本でも増加しています。そのような義肢や装具を使用してスポーツをする方に同行し、義肢や装具の微調整を行います。

発展途上国などでの国際支援

日本の義肢装具士の中には、対人地雷による切断者が多いカンボジアをはじめとするアジアで支援を行っている方もいらっしゃいます。

義肢装具士のキャリアアップの仕方

義肢装具士としての技術を高める

義肢装具士は専門職であり、高い技術を身に付けることは非常に大切です。技術を高めることによって、患者さんに合う義肢や装具をより的確に製作でき、結果的に収入も上がることが期待できます。技術の証明として、義肢・装具製作技能士という国家技能検定を受験するのも良いでしょう。級ごとに難易度は異なりますが、実技試験と学科試験に合格する必要があり、義肢装具士が技術と知識を証明する手段の一つになります。

他の資格を取得する

義肢装具士の資格を取得している方には、理学療法士の資格を取得するのがオススメです。義肢装具士が理学療法士の資格を所有する場合は、義肢装具に関する理学療法士としての知見を製作に役立てたり、義肢装具の装着訓練やリハビリを行ったりすることができます。

独立

義肢装具士は独立することが可能です。ただし前提として、医師の指示の下に義肢装具の製作をすることが定められているため、義肢装具士が1人で開業して製作、提供を行うことはできません。独立後も、病院やリハビリ施設の医師との連携する必要があります。

転職

義肢装具士は、転職の受け入れ先が広い職業と言えるでしょう。上で紹介したように様々な施設が就職先として考えられますし、経験を活かして介護分野への転職もしやすいです。

義肢装具士の海外進出

日本の義肢装具士が海外で働くことができるかについては、国によって義肢装具士の制度が異なるので一概には言えません。ただし、日本と同じく義肢装具士が国家資格になっている国では、その国の資格を取る必要がある場合が多いです。例えばカナダでは、日本の国家資格を認定してもらい、研修生として2年弱勤務し、資格認定試験を受ける権利が与えられ、筆記試験と実技試験に合格すれば、義肢士か装具士のどちらかの資格を取得することがきます。日本とは異なり、カナダでは義肢士と装具士に資格が分かれており、どちらも取得したい場合は、再び研修生として2年弱勤務し、試験に合格する必要があります。

まとめ

身体障害者の増加や義肢装具を使用するアスリート等の影響で、義肢装具士の需要は高まっています。しかしながら、国家資格としての歴史が浅いために人手不足や職場環境の改善などの課題があることも事実です。義肢装具士として成功するためには、国家資格取得とともにご自身のキャリア形成についてもしっかり考えておくことが賢明でしょう。