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芝浦工業大学附属中学校 インタビュー
芝浦工業大学附属中学高等学校 校長 柴田邦夫先生
実は、こうした改革の中で私が最も力を入れたのは、「授業第一主義」と「自立学習」です。かつては本校でも中高一貫校ならではの先取り授業を行い、宿題や補習も多く課していました。しかし、これでは生徒が疲弊するだけで本当の学力に結びつかないのではないか。そんな疑問から「授業」の大切さに立ち戻ることにしました。教師の研修も行い、生徒の反応を見ながら丁寧な授業を行うことに全力投球しています。
一方で、学習は「教わる」ものではなく「自ら学ぶ」ものです。授業で教わって終わりではなく、生徒自身が後でどれだけ反復、応用するか。それによって学習内容の定着度は大きく変わります。そこで時間割に「SD(Self Development:自立学習)」の時間を組み込み、生徒が自分自身で何をすべきか考え、学びを進める時間を設けました。
先取り授業をやめることも自習時間を作ることも大きなチャレンジで、学力の低下を心配する声もありました。しかし、学習習慣が定着することで、外部模試などの偏差値も低下するどころかさらに向上しました。何より、自ら考え、学ぶ力、つまり「自走」できる力をつけることは、将来にわたり生徒の大きな財産となると信じています。
本校では、英数国理社の基本科目はほぼ文科省の標準授業時数になっています。授業時間を増やして詰め込むよりも、週に2~3時間、生徒が主体的に学ぶSDの時間を設けることで、学力も伸びてきました。これは私達にとって嬉しい驚きであったと同時に、生徒達からも「家に帰ると疲れて勉強できないので、SDがあってよかった」と好評を得ています。
中学高校は大学進学のための予備校ではありません。学問は「言われたからやる」のではなく「自ら考えて導く」もの。興味を持って取り組んだ時こそ、力もつきます。SDを通して、生徒達は学びの基本姿勢や学ぶ楽しみを身に着けていくのです。
学びの基本ということでいえば、本校では3つの言語教育にも力を入れています。3つの言語とは、日本語、英語、コンピューター言語です。言葉は、論理的思考や判断力の礎となり、他者とのコミュニケーションにも欠かせません。日本語(言語技術)と英語を鍛えることで、他者と協力して問題解決をしていける人材育成を目指します。また、コンピューター言語も、これからの時代には欠かせないものになるでしょう。早くから学ぶことで生徒達の可能性が広がります。
自ら興味を持って問いを見出し、必要な情報を調べ、他者と意見交換をしながら、得た知識を問題解決のために生かす。古い話になりますが、幕末に新しい日本の礎を築いた人々も、そうしてもがいて学んできたのです。現代は情報こそ多いけれど、将来の不透明さは同じでしょう。正解の決まっていない道を歩く力を身に着けてほしいと強く思います。
そのため本校では、外部業者による既成のプログラムではなく、本校教員達が開発した手作りの探究授業を行っています。特徴は、「IT」と「GC」のふたつの学びです。IT(Information Technology)は、理工系の知識で社会問題を解決していく実践型授業。プログラミングの初歩を体験してドローンを飛ばすことに始まり、実際の企業の課題解決や、3DCADによる具体的なものづくりなども体験します。GC(Global Communication)では、グローバルな視点を持って長期的な課題解決に取り組みます。豊洲という身近な地域から始めて、日本国内、世界へと視野を広げていくプログラムで、中2では3泊4日の長野農村合宿に、中3ではアメリカでの2週間の教育旅行にも出かけます。様々な文化体験を通してたくさんの発見をし、毎年、生徒達が大きく成長していることを実感します。
分野横断的な学びとして、近年、STEAM教育(科学、技術、工学、芸術、数学の5つの力を総合的に学ぶ教育)の重要性が叫ばれていますが、STEAM教育はまさに本校の強みです。「ショートテックアワー」という授業はその代表例です。国語、音楽、英語など、全教科の教員が各自でテーマを考え、担当教科と科学技術の関わりについて紹介するもので、体育の先生がオリンピックで使うタイマーの話をしたり、国語の先生がAIを使って「走れメロス」を再創作するなど、興味をひかれる授業ばかりです。
また、中3の特別授業として実施している「サイエンステクノロジーアワー」では、教科書の内容を飛び出し、多様な理工系の専門分野にまつわる授業が展開されます。DNAの抽出をしたり、天体望遠鏡を製作したり。本校は普通の理科の授業でも、他校に比べて実験を多く取り入れていますが、この授業では、試験などのプレッシャーもなく、サイエンスの面白さや奥深さを心ゆくまで体験できます。さらに、冬期休みを利用した「冬期特別講座」などでも、好奇心を刺激する教養講座が幅広く行われています。
こうしたプログラムにより、生徒は楽しみながら科学技術に対する興味関心を深め、理工系の基礎学力や思考力を育んでいきます。本校は、大学で理工系に進む学生が8割を超えますが、こうした理工系の力は、文系に進む生徒にとっても欠かせない重要な素養となるでしょう。
中1で体験するのは「工学わくわく講座」。パスタの乾麺で作る橋の強度を競う「パスタ・ブリッジ」のワークショップでは、工学の楽しさを実感できるでしょう。中2は「ロボット講座」で「ビートル」というロボットを1人1台完成させ、障害物競争を行います。中3は「ものづくり講座」と題して、アプリの設計やリサイクルしやすいペットボトルの設計など、いくつかのコースに分かれて実際のものづくりを行い、デザイン工学の基礎を学びます。
いずれの学年でも、生徒達は悪戦苦闘しながらも、目を輝かせて課題に取り組みます。本校生徒ならではの「ものづくりマインド」が芽生える瞬間かもしれません。
最先端の学びに触れることは、理工系の興味を育む大きな刺激になります。この興味関心こそが学びのモチベーションにつながるのです。自ら考え、学ぶ「自走」の出発点は、この「わくわく」にあるといえるでしょう。
また、理工系の学びは専門性が高く分野も多岐にわたるため、進路を選ぶのも容易ではありません。でも、本校では、数多くの専門分野に触れる機会が多く、さらに高校では大学の研究室の見学会なども実施しますので、はっきりとしたイメージを持って進路を考えることができるようになるのも利点です。
23年前に本校に就任してから、たくさんの改革、種まきをしてきました。今、それが少しずつ実を結んでいるのを実感しています。自らの興味関心を大切に育てている在校生達の個性はますます輝いていますし、勉強はもちろん、部活やビジネスコンテストなどで活躍する生徒も多くいます。本校卒業生には、出身校を聞かれて「芝浦附属中高出身です」と答える生徒も少なくありません。大学名ではなく、つい中高の名前を答えてしまうのです。それほど6年間を実り豊かに過ごしてくれる生徒が今後もますます増えるよう、学校も教員も常に進化していきたいと思います。
「理科が好き」「数学って面白そう」「実験をたくさんしたい」そんな気持ちとともに入学してくれる生徒をお待ちしています。
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