歯科技工士の仕事内容とは？仕事の魅力・やりがいを解説！

歯科技工士とは？

歯科技工士の定義

歯科技工士は、歯科医療に関わる国家資格です。平成21年に改正された歯科技工士法によると、歯科技工とは「特定人に対する歯科医療の用に供する補てつ物、充てん物又は矯正装置を作成し、修理し、又は加工する」ことであり、歯科技工士とはそれらを仕事とする人です。
また、歯科技工士の仕事内容については同法第一章第二条において「歯科医師がその診療中の患者のために自ら行う行為を除く」と定められており、患者への直接的な治療はできません。

歯科技工士の仕事内容

歯科技工士は歯科医師の指示をうけ、患者の歯の治療に必要な人工的な歯（入歯）や被せ物などの作成・修理・加工を行います。歯の色や形、嚙み合わせや口の大きさは患者によってそれぞれで、自分に合ったものでないと食事や会話に支障を来してしまいます。歯科医師が治療をおこなったあと、歯科技工士が手掛けた歯科技工物を装着し、患者が問題なく使用できることを確認するまでが歯科治療です。歯科技工士の仕事は歯科治療に欠かせない役目を果たしていると同時に、緻密で正確な作業が求められるのです。

作成と修理・加工

歯科技工士の仕事は大きく分けて2つです。

1-3-1.製作
歯科医師の指示書をもとに、患者一人ひとりに合った歯科技工物を作成します。歯科技工物には被せ物や詰め物、入歯、ブリッジ、インプラント、矯正装置など症状と用途によって様々です。取り扱う歯科技工物は保険が適用される保険診療と自由診療があります。自由診療では患者の希望に合った材質で作成するため、高い費用がかかります。

作り方は歯科技工物によって異なりますが、入歯の場合は歯科医院から提出された患者の歯型に石膏を流し込んで模型を作り、金属などの素材を使って形にします。その間、歯型を何回か取り直したり実際に患者の口に合わせて調整したりするので、型取りから患者の元に届くまでは約1か月を要します。

1-3-2.修理・加工
作成した歯科技工物が欠けてしまったり、使っているうちに合わなくなってしまったりすることがあります。人の口の中は繊細ですから、少しでも歯科技工物が合っていないと違和感が残ることはもちろん、噛む能力が低下して結果的に全身の健康に害を及ぼすリスクを招いてしまいます。歯科技工士は患者一人ひとりに合った歯科技工物を、緻密に高い精度をもって提供しなければなりません。

そのほか、歯科医師とのコミュニケーションを取ることも大切な仕事です。与えられた指示書の通りにただ仕事をすればいいというわけではなく、患者さんにとってより良い歯科技工物がどんなものかについて意見を交換し合います。歯科医師と歯科技工士は対等な立場であり、お互いに協力しながら仕事を進めます。

歯科技工士の一日のスケジュール

歯科医院に勤める歯科技工士の一日のスケジュール例です。基本的に納品日に合わせてスケジューリングし、忙しい時期は残業があることも考えられます。

歯科技工士に必要な資質

手先の器用さ

歯科技工士の仕事はまだまだ人に頼る部分が多いため、多少のズレも見逃さず精度の高い歯科技工物を作成できる手先の器用さが求められます。それと同じく、患者一人ひとりの歯の特徴を的確にとらえ、美しく仕上げる審美眼も必要です。芸術的なセンスというよりは「ものづくり」という目線で取り組む、職人的意識が大切ともいえるでしょう。もちろん秀でて器用でなくても、コツコツやり続けることで技術を磨いていくこともできます。

向上心

医学は日進月歩であり、歯科技工士の知識や技術もまた日々進化していくことが求められます。新しい素材や加工技術にも柔軟に対応し、自らの技術をより高める努力をし続けられる向上心のある人が向いています。

社交性

黙々と手元の作業に集中できると思われがちな歯科技工士ですが、職人としての技術のほかに他者とのコミュニケーション能力も大事です。歯科医師からの指示を正確に理解するためにも、コミュニケーションが必要になる場面はあります。また、仲間とも良好な関係を築き、情報交換をすることで新しい技術や知識を補完することもできるかもしれません。歯科医師や仲間とのコミュニケーションがなければ、本当に役立つ歯科技工物は作れないでしょう。

歯科技工士の魅力

国家資格である

国家資格である歯科技工士になるためには指定の教育機関で必要なカリキュラムを修了し、国家試験に合格しなければなりません。国が認めた資格は持っているだけで社会的な信頼を獲得できます。国が必要だと認めている職業ということもあり、就職先も多く安定した仕事だといえます。

開業できる

歯科技工士は開業が許されている数少ない国家資格のひとつです。開業には確かな技術と同業者とのつながりが不可欠ですが、自分の作った歯科技工物を積極的にアピールし売り込むことで収入アップも見込めます。また、開業後に従業員を雇うことで次世代へも技術を継承できます。

需要の増加

歯の病気は生活習慣の乱れによる場合もあれば、加齢によっても引き起こされます。高齢化社会が急速に進む日本では、歯科医師や歯科技工士の需要はさらに高まっていくと考えられます。インプラントや多様な種類の入れ歯など歯科技工士が手掛ける技術の幅も広がっており、こうしたニーズに対応できる人材が今後も求められます。

歯科技工士のやりがい

国家資格である歯科技工士の仕事は専門性が高く、求められる技術も日々進歩する医学に合わせて磨き続けなければなりません。経験と努力によって磨き上げた自分の技術で被せ物や入れ歯を仕上げ、それによって患者が喜んでくれることが大きなやりがいに繋がります。また、人の老化は噛む力の衰えからはじまるといわれています。健康な口腔環境を取り戻した患者が、結果的に全身の健康や将来まで守れたとき、歯科技工士の仕事の意義と大切さを感じるでしょう。

歯科技工士として大変なこと

常に集中力が必要

患者の口の中に人工的な物を入れるわけですから、歯科技工士の仕事は常に細心の注意を払って行われます。長時間同じ体勢で作業し続けることが原因で、目の疲労や肩こりを招くこともあります。定期的に自分でリフレッシュできる習慣を身に付けましょう。

加減が難しい

患者のために真面目に取り組む姿勢はとても大切ですが、こだわりすぎると必要以上に時間をかけすぎてしまうこともあります。人の手による仕事なので、完璧な歯科技工物を仕上げることはできません。どこかで区切りを付ける必要がありますが、こだわりが強く妥協が許せない人には苦痛に感じるかもしれません。

まとめ

歯科技工士は患者一人ひとりの口や歯の形に合わせて、詰め物や入歯などを作成・加工する歯のプロフェッショナルです。口腔環境の悪化は人の老化の原因にもなるため、日常生活だけではなく患者の将来の健康まで担う重要な仕事でもあります。仕事中は緻密で高度な技術と集中力が必要とされますが、歯のように日々磨き上げられる知識と技術は一生ものであり、大変さ以上にたくさんの魅力が詰まっている職業だといえます。少子高齢化社会が進む昨今、歯科技工士のニーズはますます高まっていくでしょう。