本当の強さ・美しさは、鍛えあげられてこそ生まれるもの
私はこの春に校長職を拝命する以前から、アドバイザーとして本校の経営・運営の支援に携わっておりました。変化の激しいこの時代において、本校ならではの強みとは何か。生徒たちにどんな新しい価値観を提供できるのか。そんなことを改めて考えながら学内を見学していた時、ふとある光景が目に留まりました。部活動を終えて下校する生徒が、校門を出る際に校舎に向かっておじぎをしているのです。これまでいくつもの公立・私立校の校長を務めてきましたが、そんな生徒を見たのは初めてでした。なんて美しい姿だろうと感激して翌日に生徒本人に尋ねたところ、校則や教師からの指導ではなく、部活動の先輩からの教えだといいます。さらにその部だけの特例ではなく、いくつもの部活動内で受け継がれている伝統だと聞きました。
その時に私は、建学の精神である「健康・努力・敬愛」に加える形で、本校の新しい教育理念を見えてきました。それが「文武×美愛」です。知識を追求し(文)、体と精神の鍛錬を行い(武)、美しい生き方の実践と感動を大切に(美)、誰に対しても限りのない愛情を注ぐ(愛)。私は常々、美しさは強さであり、強さは美しさであると感じています。そして真の強さ・美しさとは、鍛え抜かれてこそ育まれるもの。まさに、部活動に勉強に学校行事にと切磋琢磨している本校の生徒たちの秘めた力であり、これからの時代に求められる人間像でもあると思ったのです。
スポーツが強ければいい、勉強ができればいい、という考え方はしない
本校は生徒一人ひとりの夢の実現に向けて、国公立・難関私大を目指す「アドバンストコース」、中堅私大・短大・専門学校を目指す「総合進学コース」、日本体育大学や実業団、専門学校への進学を目指す「総合スポーツコース」という3コース制をとっています。日本体育大学との連携で一流の講師陣が揃うという付属校の強みはさらに強化しつつ、今年度より学習指導も一新します。進路指導室を生徒が入りやすい配置に変えるほか、補習や長期休暇中の講習カリキュラムの見直しなどを行い、校内塾も充実させ文武の両立により力を入れていきます。また、社会貢献、地域貢献など、校外に出る機会を増やす予定です。雛鳥だって鳥籠から出ないと育ちません。例えば、地域のマラソンイベントなどで子どもたちやご年配の方にただしいランニングフォームを教える、防災活動支援として女性用トイレの設置のボランティアをする、といった経験は、ただ勉強ができればいい、スポーツが強ければいいという考え方では得られない、長い人生の中での貴重な財産になるはずです。
校長室のドアが開いているときはどなたでも歓迎です
生徒たちには「校長室のドアが開いているときは、いつでも入ってきていいよ」と伝えています。生徒たちは、進路の相談や、雑談をしにやってきます。保護者の方もいつでもいらしてください。苦情でも、内密の相談事でもお聞きします。また、生徒たちが出場する大会など活躍の場にはできうるかぎり出向くようにしています。そこでは生徒たちの校内とは違う表情を見ることができます。そして体験や感動を共有し、帰ってきてからも同じ話題で盛り上がることができます。教育に携わる者として、こんなに嬉しいことはありません。こう言うと格好つけ過ぎかもしれませんが、「趣味は教育」と自負しております。これまで30余年に渡る教職、校長職、教育委員会やコンサルタント業務での経験を、本校の教育活動に生かしてまいります。生徒たちの一人ひとりが美と愛を持ち、それぞれの人生で自分らしくしなやかに輝くことを願いながら。