Borderを越えた先でつかんだものを、他者のために使える心を大切に
私が校長に就任したとき、新たに掲げた学校目標があります。「Beyond the Borders」という言葉です。直訳すると「国境を越える」ですが、私たちはここに2つの意味を込めています。1つは「まずは一歩を踏み出してみよう」ということ。現代社会では、自分の可能性を信じられず、自信が持てない若者が増えています。そんな自分を越えて主体的に学ぶ力を身に付け、教員はその背中を押してあげられる存在であろうという願いを込めました。もう1つは、文字通り国境を越えていくことです。生徒たちには、日本という枠の中に収まるのではなく、その目でリアルに広い世界を見て欲しいんですよ。また、キリスト教ミッションスクールとしての教えに根差し、そうしたBorderの先で得た知識や力を、自分ではなく他者のために用いる利他の精神を大切にしています。
全員留学、定期テスト廃止、縦割りグループ学習などユニークな取り組み多数
Borderを越えるために本校が行っている取り組みの代表格が「Wake-Up全員留学」です。入学したての生徒全員が海を渡り、中1はオーストラリアに2週間のホームステイ、高1はフィリピンで姉妹校の大学の寮に3週間の寄宿をします。しかしこれらは、単なる語学研修や気軽な文化体験ではありません。例えば中1はホームステイ先の家族の一員となるために滞在中は保護者との連絡は禁止です。高1は週末スラム街の家庭に出向いてインタビューやボランティアを行います。当然、不安になる生徒や心配する保護者さんもいらっしゃいますが、それを乗り越え自立を促すことがまさに「Beyond the Broders」の目的の一つなのです。
小規模校であることを活かした「全員担任制」も誇れる制度ですね。教員全員で生徒を育てるという考え方で、HRを担当する教員は週ごとに変わり、学期末の面談も担当教員を生徒が選べるようになっています。学習面では、定期テストを廃止、いち早く単元別テストの導入で学力の定着を図っていることや、中1~高3までが一緒に取り組むグループ学習も本校らしい取り組みです。ミッションスクールであることを活かして、「隣人愛」をテーマにした聖書の学びや自分で課題を決める探究学習にも力を入れています。また、そうした学習をより深く効率的に進めるためのICT環境整備もかなり早くから取り組んでおり、2015年ごろにはすでに1人1台のタブレット学習をスタートさせていました。
自分のことは自分で決めて、正解なき社会を生き抜ける人に
2024年度からはさらに大胆な取り組みも開始しました。授業時間数を少なくして毎日6限までとし、以降の時間は自分がやりたいことに取り組む時間に充てます。部活動に精を出してもいいし、学外の習いごとやスポーツクラブに力を入れてもいい。探究活動や受験勉強を頑張ってもいいし、(本校には音楽科もあるので)ピアノの練習をするのもいい。とにかく、固定概念にとらわれない自由な発想と主体的な学びで、自分のことは自分で決められる人になって欲しいのです。大いなる存在である神様のことを意識しつつ、Borderを越えて自分がどう生きるべきか、何をすべきか考え、その成果を社会に奉仕していく人に。
未来予測が難しく、正解なき現代社会です。常に学び続け、いろんなことを経験してほしいですし、そのために学校としても新しい挑戦をどんどん取り入れていきたいですね。